形成外科の治療
形成外科
形成外科では、主に身体外表の治療を行っています。その対象は、先天的な形態異常や後天的に受けた傷、変形です。鼻や耳の形態異常、口唇裂、あざ、やけど、手術、外傷による傷跡、又、皮膚にできた腫瘍などがあげられます。
【口唇裂、唇裂修正】
口唇裂は最近の統計で、新生児の400~1000人に1人の割合で発生といわれ、比較的頻度の高い形態異常の一つです。一般に、口唇裂の手術は、生後3ヶ月で行ないます。生後3ヶ月くらいになると新生児も唇が大きくなると同時に、全身麻酔に対し安全に耐えられる体力がついてくるとされているからです。
軽症の場合は、上口唇の片側だけが少し切れた不完全唇裂で、重症の場合は口の中まで割れた状態のものもあります。しかし、現在では、適切な手術を行うことで、ぱっと見た目には口唇裂だったことがわからないくらいに治療を行うことが可能です。成長につれて変形が目立つようになることがありますので、その場合は、改めて修正手術を受けることになります。小学校入学前などに行うことが多いようです。
【口蓋裂】
口蓋裂は口蓋が裂けた状態を言います。口唇裂と合併しているものも少なくありません。放置しておくと発音がうまくできません。中耳炎や咽頭炎がおきやすいともいわれています。2才頃手術をする場合が多いのです。形成外科が主に治療を行ないますが、時に耳鼻科や歯科の医師が治療を行うことがあります。
【眼瞼下垂】
上まぶた(上眼瞼)が垂れ下がり瞳孔(ひとみ)を覆ってしまい、目がよく開かず視界が狭くなってしまう状態で、先天性のものと後天性」で起こるものとがあります。
当院での眼瞼下垂治療は、先天性・後天性にかかわらず「傷跡をいかに残さないか」にこだわり手術をおこなっております。
形成外科の専門医として火傷や外傷といった多くの治療経験と実績で、傷を残さない綿密な縫合技術で皮膚表面が美しく滑らかな仕上がりになります。
先天性眼瞼下垂
生まれつき上まぶた(上眼瞼)が垂れ下がっている状態です。
まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)の発達が不充分の場合におこります。時に筋肉がほとんどない場合もあります。瞼が上がらないため視界が妨げられ、弱視になる可能性があります。又、外斜視になります。早めに手術を行なったほうが良いでしょう。手術は乳児でも受けられます。手術は、まぶたを引き上げる筋肉を短くしたり、糸や筋膜、真皮などを利用して、間接的にまぶたを額の前頭筋と連結させて吊り上げる方法が行われています。最近では前頭筋を上眼瞼に連結させ、直接、瞼を引き上げる方法で行われるようになってきました。(前頭筋法)子供の手術は全身麻酔で行うため、数日間の入院が必要です。
手術後、再び、まぶたが下垂してしまう場合があります。その場合は、再手術が必要になります。
後天性眼瞼下垂
生まれた時は正常でも、生活をしていくうち、瞼が重く下がる、夕方になると「おまえさん、ねむたいのかい?」などと言われてしまう。瞼を上げる為、おでこに力を入れ、しわが寄ってしまったり、眉毛の位置が変わり、左右アンバランスの眉毛となったりします。原因は眼瞼挙筋の部分の働きが悪くなるため、下垂がおきます。近視のひどい人、コンピューターなどを長い間見て、眼精疲労がひどい人などが、この後天性眼瞼下垂になりやすいようです。頻度はかなり多いと言えます。治療は手術となります。瞼板の一部と眼瞼挙筋の一部を切除する、眼瞼挙筋短縮術を行ないます。先の小児の眼瞼下垂に比べ、手術は比較的楽です。時に瞼があがりすぎることがあります。しばらく様子をみます。少しずつ下がってきます。しかし、あがりすぎた状態が半年以上続くこともあります。この場合には瞼を下げる手術を追加手術として行なうことがあります。
【顔面神経麻痺】
顔が突然曲がってしまった。眉毛を上げられない、目をつぶれない、口が曲がる、ほうれい線がなくなってしまう。などの症状がでることがあります。このような人は顔面神経麻痺と言えます。
目がつむれないような状態では、早急に手術が必要となります。
【傷跡】
ケガをしたあとや手術により傷跡が残ってしまうことがあります。又、表情をつくるとへこんだり、ひきつれたりすることもあります。傷を受けた時、道路のゴミやアスファルトの破片などが皮膚に入り込み、イレズミのようになってしまうこともあります。外傷性色素沈着といいます。
目立つ傷跡はそのまま残しておくと悩みの種になります。傷跡を目立たなくする薬を飲んだりテープを貼ったりします。
又、時に傷跡の部分を切除し、場合によっては皮弁作成と言い特殊な切り方をすることによりひきつれを治したり、傷跡をより一層目立たなくすることがあります。
ひきつれができ機能障害をきたす場合には保険適応となります。
単に傷跡を目立たなくする場合には保険は適応されません。
【火傷跡(ケロイド)】
やけどの跡や傷の跡が赤く盛り上がっているものを肥厚性瘢痕と言います。通常は半年から2年くらいで自然に治り、白色の瘢痕になります。傷跡が赤く目立つ人は有色人種や黒人に多いようです。又、18-40才くらいの人は赤ちゃんや老人に比べ赤みが目立つようです。又、耳、あご、肩、胸の部分は傷跡が赤く盛り上がりやすい部分です。何ら原因がないのに突然赤く、もり上がった傷跡の状態を呈することがあります。このような場合をケロイドと言います。
これら目立つ傷跡やケロイドの治療は内服薬を飲んだり、ステロイドのテープを貼ったり、注射をしたり、圧迫をしたりして治療していきます。
この治療は繰り返し行う必要があります。
【耳の変形・奇形】
耳のかたちがおかしい、耳輪が頭皮に入り込んでしまっている。
などは、いずれも小耳症、埋没耳輪、スタールイヤー、耳輪癒着症などと言います。埋没耳輪の場合には生後間もない時でしたら器具やスポンジで治る場合があります。
小耳症や耳の変形が高度な場合には、肋軟骨を耳の型にして本来の耳に合わせて作る、小耳症形成手術を行ないます。